T 平成23年度事業報告
第1 一般概況
1. 情勢
平成23年度の我が国の経済は、最近の内閣府の月例経済報告等では、基調判断として景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、緩やかに持ち直しているとされている。
先行きについては、各種の政策効果などを背景に、景気の持ち直し傾向が続くことが確かなものとなることが期待されるが、欧州政府債務危機の影響や原油価格の上昇、これらを背景とした海外景気の下振れ等によって、我が国の経済が下押しされるリスクが存在する。また、電力供給の制約や原子力災害の影響、さらには、デフレの影響、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意する必要があるとされている。
このような情勢の中、食品流通を取り巻く環境は、消費者ニーズの多様化・高度化等需要動向の変化、農産物輸入の増大等供給事情の変化、規制緩和による量販店の進出、企業間競争の激化、外食産業の拡大、情報化の進展、物流の効率化、品質管理の高度化、更には人材不足等、著しい環境変化の中にある。
こうした中で、青果地方卸売市場の経営状況を見ると、23年3月11日に発生した東日本大震災による被災地域の青果物生産の落ち込み、被災地を中心とした経済の減退や先行き不安からの消費の減退、更には原発事故による放射線汚染による青果物の出荷制限措置及び風評被害による販売不振等から取扱数量、売上高とも22年度に比して、大幅に落ち込んだ一年であった。
平成23年度の主要青果卸(農経新聞社調査、調査対象51社)の取扱高を見ると、開市日数が前年度比2日多かったにもかかわらず、東日本大震災による生産・流通施設の倒壊・流失による生産出荷量の減少や東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射能汚染による出荷制限・出荷自粛及び風評被害による需要減退が大きく影響し、野菜が前年比関東地域で90〜93%、東海以西地域で95〜98%、果実が前年比関東地域で93〜94%、東海以西地域で97〜98%、青果合計で前年度をクリアした卸は地方市場では皆無であった。
なお、平成24年5月24日現在の放射能汚染による青果物の出荷制限品目は、6県、延べ102品目であり、出荷自粛品目は10県、延べ32品目におよんでいる。
2. 都道府県卸売市場整備計画
各都道府県においては、平成22年10月26日に農林水産省から策定・公表された第9次卸売市場整備基本方針に示された次の重点事項に則して、卸売市場整備計画の策定が進められた。
@ |
地方卸売市場においては、地域における生鮮食料品流通の核となる地域拠点市場が市場間連携の強化や再編統合を進めるにあたり主要な役割を果たしているところであり、この地域拠点市場を核として集荷力の強化をはかること。 |
A |
生鮮食料品等を生産・流通・消費の過程で一貫して低温に保ち流通させるコールドチェーンシステムの構築をはかること。 |
B |
食の安全や環境問題等の社会的要請への適切な対応、生産者・実需者のニーズに対応するための低温卸売場や荷捌場の計画的な配置、物流の効率化を推進すること。 |
3. 辞任に伴う役員の改選
平成23年度の通常総会(6月14日)において、辞任に伴う役員の補充選任が次のとおり行われ、登記の変更を行った。
辞任役員 |
新(就任)役員 |
尾崎 雄造 氏(副会長=四国支部) |
柴田 勝幸 氏(副会長=四国支部) |
鈴木 圭介 氏(理事=信越・北陸支部) |
橋 堅二 氏(理事=信越・北陸支部) |
三原 勝榮 氏(理事=九州支部) |
大野 憲俊 氏(理事=九州支部) |
篠埜 賢治 氏(専務理事) |
清水 武久 氏(専務理事) |
第2 会員
平成23年度における会員の異動は次のとおり。
脱退会員:
@ |
福井県地方卸売市場協議会(会長 中野史生) |
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- 脱退届出:平成23年7月14日
- 脱会事由:「地方の小規模な市場団体であり全青協の会費を捻出することが困難」
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A |
山口県青果市場荷受協議会(会長 清水英男) |
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- 脱退届出:平成24年3月1日
- 脱会事由:「会員が減少し全国組織に加入する意義が薄れ経費の負担も大きい」
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第3 会議
平成23年度においては、通常総会1回、役員会4回、監査会1回を開催した。
その概要は、次のとおり。
1. 総 会(1回)
総会名 |
開催月日 |
議決事項等 |
平成23年度 通常総会 |
平成23年 6月14日 |
第1号議案 |
平成22年度事業報告書並びに収支計算書・正味財産増減計算書・貸借対照表及び財産目録の承認について |
第2号議案 |
平成23年度事業計画(案)並びに収支予算(案)の承認について |
第3号議案 |
平成23年度会費の賦課及び納入方法について |
第4号議案 |
辞任に伴う役員の補充選任について |
| 付帯決議 |
その他報告事項について |
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2. 役員(理事)会(4回)
役員会 |
開催月日 |
議決事項等 |
平成23年度 第1回役員会 |
平成23年 6月14日 |
第1号議案 |
平成23年度通常総会附議事項決定について
- 平成22年度事業報告書並びに収支計算書・正味財産増減計算書・貸借対照表及び財産目録の承認について
- 平成23年度事業計画(案)及び収支予算(案)の承認について
- 平成23年度会費の賦課及び納入方法について
- 辞任に伴う役員の補充選任について
付帯決議
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第2号議案 | その他 |
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第2回役員会 |
平成23年 8月2日 |
第1号議案 | 平成23年度全青協第44回秋の四国・愛媛大会の開催について |
第2号議案 | 農林水産省定期立入検査結果について |
第3号議案 | その他 |
(引き続き「全青協・市場活性化研究会(講演会)」を開催) |
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第3回役員会 |
平成24年 1月13日 |
第1号議案 | 平成24年度予算案策定方針について |
第2号議案 | 平成24年度通常総会開催(計画)について |
第3号議案 | その他
- 平成23年度第4回役員会の開催について
- 平成24年度全青協・秋の大会の開催について
- 諸規程の改正等について
- 特例民法法人から一般社団法人に移行するための定款の変更について
- 報告事項
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(引き続き「全青協・市場活性化研究会(講演会)」を開催)
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第4回役員会 |
平成24年 3月21日 |
第1号議案 | 平成24年度暫定予算案の承認について |
第2号議案 | 平成24年度会員別会費の見直しについて |
| (書面による表決権の行使方式) |
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3. 監査会(1回)
平成21年度 監査会 |
平成22年 5月24日 |
- 平成21年度事業報告、収支決算の監査について
- その他
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第4 主な事業
1. 全青協秋の大会の開催
本年度は、「全青協第44回秋の四国・愛媛大会(四国3県連共催)」として、10月20日松山全日空ホテル(松山市)において農林水産省食料産業局長井卸売市場室長、愛媛県高浜副知事、松山市野志市長、中国四国農政局中谷事業戦略専門官、(財)食品流通構造改善促進機構三宅専務理事、全国生鮮食品等卸売業厚生年金基金小林常務ほか友好団体並びに業界紙報道関係者等多数のご来賓と会員関係者180余名の参加により盛大に開催された。
第1部の記念講演では、沼田淳子氏(且l国観光バスガイド紹介所代表)の「坂の上の雲」と題した講演を拝聴した。
第2部の秋の大会は、愛媛県青果卸売市場連合会柴田勝幸会長が開会宣言、愛媛県新居浜青果渇ヘ野官治取締役による物故者に対する黙祷に続き、全青協倉ア会長の大会式辞の後、青果物流通に貢献された19名の方々に全青協会長名の表彰状が授与された。
続いて、針原寿朗農林水産省食料産業局長、中村時広愛媛県知事、野志克仁愛媛県松山市長、馬場久萬男(財)食品流通構造改善促進機構会長からそれぞれご祝辞を賜った。
また、東日本大震災被災地を代表し宮城県青果市場連合会近江惠一会長より会員の皆様から寄せられたお見舞いに対し謝辞が述べられた。
来賓紹介、祝電披露に続いて、大会宣言が愛媛県青果卸売市場連合会小野明副会長から大会宣言が提案され、満場一致で採択された。
最後に、次期開催地の九州支部を代表して大分県青果物卸売市場連合会村上年夫会長から歓迎の言葉が述べられた後、高知県青果卸売市場連合会村山寿夫会長の挨拶で閉会した。
第3部の懇親会では、アトラクションを楽しむなど、和やかなうちに会員間の交流と情報交換が図れた。
2.「全青協・市場活性化研究会」開催
次のとおり市場活性化研究会(講演会)を開催した。
(1)第2回市場活性化研究会(講演会)
日時:平成23年8月2日
講師:東京農業大学大学院国際食料情報学部教授 藤島廣二氏
演題:「卸売市場の社会的意義と卸売市場の活性化方策」
講演内容:
@生鮮食品流通における卸売市場の社会的意義について A市場流通環境の変化について B卸売市場流通の変化について C@〜Bを踏まえて、卸売市場の今後の活性化方策について、生産・流通・消費のデータに基づき講演いただいた。
(2)第3回市場活性化研究会(講演会)
日時:平成24年1月13日
講師:拓殖大学商学部教授・(財)流通経済研究所理事 根本重之氏
演題:「2012年の展望と課題 〜市場、流通、ITの変化と営業・マーケティング〜」
講演内容:
@「我々は今どのようなところにいるのか」
・2010〜2020年の間に全国の人口は3.5%減少する、人口減少はそれ程大きくないが、中味(地域差、世帯構造、年齢構成)が大幅に変わる。このような中では従来と同じスタンスでは通用しない、変化を想定し備えておくことが不可欠。
A「想定し備えておきたいこと」
・自然災害は必ず再発生する、これからはしっかりした危機感を持って備えておくことが重要。併せて、復興需要を活用する、これからの経営者は新しいイベントにどんどん参加すること、その際「自分を常にマクロ(世の中の動向)につないでおくこと」と「時を味方につけること」が重要。
B「大震災による消費者の欲求と行動の変化」
・消費者はまず、飲食料品の備えを重視、節約・自粛ムードが働いて内食・内飲が多くなる。スーパーやコンビニによる「近場買」が増加。コンビニは、東日本大震災で今まで取れていなかった調理をするような客層を大量に取り込むことができた。
C「新しいビジネス・顧客作り」
・団塊の世代が引退し「戦後生まれの高齢者」が誕生すると家庭需要は増加しスーパーの売り上げが上昇する。そのほか韓流とのコラボ(協調) 、ホームセンターへの販促、介護サービスとのコラボ(連携)、「若年層」「未顧客」「非顧客」の開拓などが重要。
3.青果物コンテナ流通普及研究会開催
平成23年8月22日「第2回青果物コンテナ流通普及研究会」を開催し、これまでの検討結果の取りまとめ及び「全国流通モデル」「地域流通モデル」の推進方策について検討を行った。
具体的な推進方法は、@地域流通モデルについては、既にコンテナの導入が進んでいる県連、単協から「コンテナ利用のメリット」を発信してもらい、メリットをPRしながら普及推進を行う。
A全国流通モデルについては、全国を一気に行うことは困難であるため、いくつかのモデルを作りその中で推進する。モデルはコンテナを利用する特定の産地、卸、スーパーも特定して一気通貫のシステム( クローズのシステム)を作る。また、取引相手が確定している契約取引、直接納入などにコンテナを導入することにより普及推進を行う。
4.卸売市場調査研究助成事業
卸売市場の活性化等に関する検討会の開催、会員傘下卸売市場の役職員の資質の向上のための研修会を実施した4会員に助成した。
5.機関誌「全青協」の刊行事業
平成23年度においては、前年に引き続き、青果物流通に関する識者の意見や提言、農林水産省が公表する資料、その他会員の事業運営上参考となる記事などを掲載して、計画どおり毎月1回、計12回刊行した。なお、23年度の有料購読者は430名であった。
6.青果物流通情報処理協議会について
青果物流通情報処理協議会委員会(全農、日園連、全中青協、全青協で構成)8月19日に開催された事務局会議の決議をもって、同委員会が9月5日に開催(書面)され、青果物統一品名コードに野菜1品目(生しいたけ(原木))、果実1品目(なつたよりびわ)、加工果実1品目(柿加工品)の追加設定が承認された。(新コード適用開始日:平成23年10月1日)
また、1月26日の事務局会議の決議をもって、同委員会が3月8日に開催され青果物統一品名コードに野菜1品目(大粒なめこ)、果実4品目(さくらピーチ、サマーティアラ、イバラキングメロン、ひとりじめBonBon )の追加設定が承認された。(新コード適用開始日:平成24年4月1日)
7.福祉事業について
(1)全国生鮮食品等卸売業厚生年金基金
全青協傘下の会員と全魚卸連の傘下会員が主力となって構成している年金基金は、平成
24年3月31日現在で、加入事業所数409事業所、加入人員9,006名で減少傾向にある。
(2)労災上乗せ補償共済制度
全青協傘下企業の加入人員は、1,219人で減少傾向にある。
(3)全青協クループ保険(生保・損保)
平成16年3月1日にスタートした全青協関係事業所の加入規模は、平成24年3月31日現在で、加入事業所数77事業所、加入人員1,347名で減少傾向にある。23年度の支払保険金は、9件(7事業所)2,800万円となった。
8.地方卸売市場青果取扱高調査結果について
地方卸売市場青果取扱高調査について、全青協と農経新聞社との共同調査による第9回目の調査として、平成22年度全国地方卸売市場等青果卸取扱高調査を実施した。それによると、調査対象362社の青果物合計の取扱金額の平均前年比は105.3%、野菜が105.7%、果実が104.6%、(水産等を含む)総合計が104.7%となり、天候不順による野菜の高値などで4年ぶりに前年を上回った。
しかし、青果物合計の取扱金額が前年を上回る中で、取扱金額上位150社を見ると、150社中約2割に当たる28社が前年を下回っており、前年を下回った会社は取扱金額が45億円以下の会社に多くまた、地域的には大都市周辺の衛星市場の不振が目立っている。このことは、地方市場の集荷力の低迷を裏付けておりまた、大手と中小の格差も開いていると考えられる。
一方、地方市場ではない全農青果センターの青果物の取扱高は、引き続き好調で、東京・大和・大阪の3センターの総合計では1,600億円で前年比102.7%であった。これは、早い段階からの売り込みや綿密な情報交換、コールドチェーンが威力を発揮しているものと考えられる。
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